徳島大学総合科学部モラエス研究会

徳島大学総合科学部モラエス研究会の活動記録

加賀の千代女のこと、次回研究会のご案内

加賀の千代女のこと

今回は、モラエスポルト商報』に書き送った「日本通信」の中から、1904年12月22日に掲載された日本の詩歌を紹介した記事を紹介します。

 

モラエスは日本の詩歌を、『古今和歌集』に添えられた紀貫之の序文を踏まえて次のように紹介します。

 

十世紀に和歌を編集したとき、編集者は日本の詩歌の定義を次のように定めている。—「『やまと』(日本)の詩歌である『やまとうた』は人間のこころに宿って、後に、言葉で表現するものだ。人間は万事にこころをかけていて、その感情を見るもの聞くものすべてに表現する。しかし、花にとまっているウグイスの声、沼地に潜んでいる蛙の声を聞くと、この世にあるものがすべて歌になるのを理解するだろう。少しも激しい力を用いないで、天と地をゆるがし、眼に見えない守護神を感動させ、両性の神の仲をやわらげて、勇士のこころを慰める、それが『うた』の目的である」と。十世紀も隔っている現代の「うた」でも、なお同じ言葉で定義できる。」

 

『モラエス全集II』(モラエス著, 花野富蔵訳, 集英社1969)に収められた「日本通信II」より

 

この記事の中でモラエスは主に短歌と俳句を紹介しているのですが、ここでは加賀の千代女のエピソードを1つ挙げておきます。

 

古くからよく知られている俳女、千代女作のものがある。ある日、四角と三角と円で十七綴字の「うた」を作るよう命ぜられた。彼女は即座に答えた — 「蚊帳の一隅をはずして、私はいま月を眺めている!・・・・・・」。

 

この句は「蚊帳の隅 一つはずして 月見かな」というものです。方形に吊った蚊帳の一隅を外して三角にして、できた隙間から丸い月を眺めているという意味で、見事に四角、三角、丸が歌い込められています。

 

モラエスは千代女を気に入っていたようで、後に徳島に移住してから彼女の代表句である「朝顔や 釣瓶とられて もらひ水」を高札にカタカナで書いて、庭に置いていました。下の絵は、『徳島の盆踊り』の原著の挿絵に使われた自筆のスケッチです。

モラエスは『枕草子』の作者清少納言のことも高く評価していました。才気溢れる女性が好みだったのかもしれません。

 

次回研究会開催ご案内

 次回の研究会・読書会は少し間が空きますが、10月26日(土)に開催します。奮ってご参加ください。

 

研究会例会・読書会:

日   時: 令和6年10月2日(土) 10時30分~12時

場   所: 徳島大学総合科学部1号館・ゼミ室

      (下のキャンパスマップの赤丸で示した場所です。)

参 加 費: 無料(申し込み不要)

読書会の内容:資料はその場で配布予定です。

※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。

 

 

お問い合わせ先:

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

佐藤 征弥

電話:088-656-7222

メールアドレス:satoh.masaya@tokushima-u.ac.jp

 

 

 

 

 

 

研究会例会・読書会の中止、桑原信義様の思い出

研究会例会・読書会の中止

 8/31(土)の研究会例会・読書会は、台風10号の接近により中止といたします。

 今回の台風は大きな被害が予想されています。皆様お気をつけください。

 次回の研究会は、1ヶ月空いて9/28(土)に開催いたします。奮ってご参加ください。

 

 

研究会例会・読書会:

日   時: 令和6年9月28日(土) 10時30分~12時

場   所: 徳島大学総合科学部1号館・ゼミ室9

(旧名称「社会創生ゼミ室2」として何度か開催した部屋です)

      (下のキャンパスマップの赤丸で示した場所です。)

参 加 費: 無料(申し込み不要)

読書会の内容: 資料はその場で配布予定です。

 

※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。

 

 

桑原信義様のこと

 徳島銀行(現徳島大正銀行)の頭取や徳島日本ポルトガル協会の会長などを勤めた桑原信義様が8月20日に亡くなられました。

 桑原様は本研究会の発足時からご参加いただき、徳島日本ポルトガル協会会長というお立場から、モラエスについて数多くのイベントを共催させていただきました。豊かな人脈を活かされて、様々な方面からモラエスの顕彰活動を続けてこられましたが、その熱意の根底には、徳島にゆかりのある作家を盛り立てようという郷土愛も強かったと思いますが、なによりもまずモラエスのファンであったということがあったと感じます。

 モラエスの著作を丹念に読み込まれモラエスの実像に迫ろうとする真摯な姿、謎の多いモラエスの足跡を追い続けて独自の観点から調べていかれてる姿にはいつも感銘を受けました。

 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

 桑原様の思い出として桑原様の写真を2枚載せます。

2018年モラエス賞授彰式にて。この年は徳島大学総合科学部がモラエス賞を、桑原様が特別賞を受賞しました。三木玲子在徳島ポルトガル名誉領事より、表彰状が手渡されました。
(左より宮崎様、三木様、桑原様)

2021年に当研究会が徳島日本ポルトガル協会より感謝状をいただいた時の写真。

 (左:高橋学部長(当時)、右:桑原様)

 

 

お問い合わせ先:

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

佐藤 征弥

電話:088-656-7222

メールアドレス:satoh.masaya@tokushima-u.ac.jp

 

 

酷暑 & 次回研究会のご案内

酷暑

暑い、暑い、ひたすら暑い !・・・・・・

 

モラエス著、岡村多希子訳『徳島の盆踊り』65章より。ことのは文庫(2010)

 

これは、大正4年(1915)7月31日にモラエスが日記風に書いた記事の冒頭です。

このブログを読んでいる皆さんも、毎日同じように感じておられることと思います。

 

モラエスは続けて次のように記しています。

 

暑さは相変わらず厳しい。私には自分がどうやって生きているのかわからない。生きているのかどうかさえもわからない。だが、夕方、少し生気をとりもどして戸外に出ると、祇園神社あたりの街路を埋めつくす人波は実に感動的で、この町では生はまだ消えてはいないのだ、むしろ強く脈打ち、続いていくだろうということをはっきりと認識させられる。

 

この年の徳島市の7月の1日あたりの平均気温は26.4℃でした。実は他の年と比べて、そんなに暑い年ではありませんでした。暑さに弱いモラエスは、夏になるたび、暑い暑いとこぼしていました。

 

ちなみに今年(2024年)の徳島の7月の平均気温は28.4℃で、2018年と並んで観測史上最高だったようです。地球温暖化に警鐘が鳴らされている昨今ですが、99年前と2度しか違わないのは少し意外に思えるかもしれませんが、体感からしたら大違いですし、農林水産業や生態系に与える影響も大きなものがあります。今後ますます気温上昇が続くと予想されることを考えると、恐ろしいですね。

 

次回研究会開催ご案内

 次回の研究会・読書会は下記の日時で開催いたしますので、奮ってご参加ください。

 

研究会例会・読書会:

日   時: 令和6年8月31日(土) 10時30分~12時

場   所: 徳島大学総合科学部1号館・ゼミ室9

(旧名称「社会創生ゼミ室2」として何度か開催した部屋です)

      (下のキャンパスマップの赤丸で示した場所です。)

参 加 費: 無料(申し込み不要)

読書会の内容: 資料はその場で配布予定です。

 

※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。

 

 

お問い合わせ先:

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

佐藤 征弥

電話:088-656-7222

メールアドレス:satoh.masaya@tokushima-u.ac.jp

 

 

神戸領事の消息、次回研究会のご案内

神戸の領事たち

モラエスは、1904(明治37)年8月31日の『日本通信』において、神戸の新聞が報じた神戸の領事たちを紹介した記事を伝えています。以下に抜粋します。

 

「日本の新聞も権謀術策の政治の長談義よりも子供っぽい問題や創意工夫にみちた余談、ときによると、無邪気なゴシップの方を喜ぶ。このゴシップの類として、私はほんの数日前、日本の新聞、『神戸又新日報』に現れた記事、外国に関するものなので特に読者の興味をひくだろう記事を、ここに転載しようと思う。その記事は「神戸領事の消息」と題した次のようなものである。」

 

ポルトガル領事モラエス氏はいまイタリア領事の事務を代行している。同領事館は新しい事務所を建築中である。」

 

ポルトガル領事館には、珍奇な品がいろいろある中で、シナと日本の絵画、籠の中に一羽のカナリア、水のいっぱいはいった水槽内のサンショウウオがある。領事は学者である。」

 

「今、ペテルスブルグにいる元ロシア領事トシリエフ氏がここにいたとき、領事団では最も怠け者だった。朝は十一時半におきてくる。シナ領事館では、誰かれの差別なく訪問者に茶を出している。同様に、商業の方に熱心な領事館はベルギー、チリー・・・・・・の各領事館である。」

 

神戸又新日報(こうべゆうしんにっぽう)は、 今は存続していませんが、最盛期には発行部数が80万近くまでいった有力な地方新聞の1つでした。

戦争中ということもあってから、ロシアの領事に対しては辛辣な書き方をしています。中国の領事館では、誰にでもお茶を出すと書いており、そんな些末なことも当時の新聞はこういうことも報じていたのかと驚きます。

さて、モラエスについては、学者であり、珍奇な品がある書いてありますが、挙げられている以外にどんなものがあったのか気になりますね。

 

次回研究会開催ご案内

 次回の研究会・読書会は少し間が空きますが、7月27日(土)に開催します。奮ってご参加ください。

 

研究会例会・読書会:

日   時: 令和6年7月2日(土) 10時30分~12時

場   所: 徳島大学総合科学部1号館・ゼミ室

      (下のキャンパスマップの赤丸で示した場所です。)

参 加 費: 無料(申し込み不要)

読書会の内容:資料はその場で配布予定です。

※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。

 

 

お問い合わせ先:

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

佐藤 征弥

電話:088-656-7222

メールアドレス:satoh.masaya@tokushima-u.ac.jp

「モラエス」論集のこと、次回研究会のご案内

モラエス論集について

 研究会のメンバーの石川榮作名誉教授のご尽力により、「「モラエス顕彰による地方創生プロジェクト」論集 第7号」が完成し、前回の研究会で配布しました。

石川先生が徳島大学総合科学部長を務められていた2015年に創刊号をつくって以降、ずっと石川先生に企画・編集していただいてきました。ここに感謝申し上げます。

表紙と目次を載せておきますが、今回もたくさんの方々から原稿をちょうだいし、充実した内容となっています。お読みなりたい方は、PDFをお送りしますので、佐藤にご連絡ください(連絡先は下にあります)。




次回研究会開催ご案内

 次回の研究会・読書会は下記の日時で開催いたしますので、奮ってご参加ください。

 

研究会例会・読書会:

日   時: 令和6年5月2日(土) 10時30分~12時

場   所: 徳島大学総合科学部1号館・ゼミ室

      (下のキャンパスマップの赤丸で示した場所です。)

参 加 費: 無料(申し込み不要)

読書会の内容:資料はその場で配布予定です。

※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。

 

 

お問い合わせ先:

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

佐藤 征弥

電話:088-656-7222

メールアドレス:satoh.masaya@tokushima-u.ac.jp

桜のこと、次回研究会の案内

日本の桜

すっかり暖かくなり、各地の桜の便りが届くようになりました。

3月に開催したモラエス研究会で、モラエスによる桜の記事を紹介しましたが、一部を抜粋します。

 

西洋の学者が軽蔑して、prunus pseudo-cerasus(にせのさくら)とラテン語で名づけられてている日本の桜は、飢えためんどりさえ振り向いて見ない、役にたたぬ小さい実がいくらかなるもので、しかも、その花も花盛りでもちっとも美しくないものと言っているのだが、実に美しいということを、知らぬ人にはお知らせする。

   (1904年4月26日に『ポルト商報』の「日本通信」に載った記事)

 

モラエスが、小さい実が成るprunus pseudo-cerasus(にせのさくら)と記した桜は、カラミザクラ(唐実桜)のことです。名前の通り中国から入ってきた桜で、サクランボより小さな実が成り、食用にしています。

モラエスは、このカラミザクラと、ソメイヨシノに代表される観賞用の桜を、わざとかもしれませんが、混同して記事に書いています。

サクラの世界各地に多様な種が存在し、ヨーロッパでサクラといえば、サクランボを収穫するいわゆるチェリー、和名ではセイヨウミザクラ(西洋実桜)が一般です。当時日本に来たヨーロッパ人の中には、日本の桜は実が成らないことをあげつらう人もいました。サクラの仲間には、自家不和合性という性質があり、クローンばかりのソメイヨシノは受粉しても受精しないため実が成らないのですが、異なる種類の桜とだったら実が成ります。

さて、カラミザクラについてですが、学名というものはちょくちょく変わるもので、現在の学名は、Cerasus pseudocerasusとなっています。「にせのサクラ」を意味するpseudocerasus の部分がそのままになっているのは可哀想ですね。

 

2024年3月23日の研究会の様子

 

次回研究会開催ご案内

 次回の研究会・読書会は下記の日時で開催いたしますので、奮ってご参加ください。

 

研究会例会・読書会:

日   時: 令和6年4月27日(土) 10時30分~12時

場   所: 徳島大学総合科学部1号館・ゼミ室

      (下のキャンパスマップの赤丸で示した場所です。)

参 加 費: 無料(申し込み不要)

読書会の内容:資料はその場で配布予定です。

※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。

 

 

お問い合わせ先:

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

佐藤 征弥

電話:088-656-7222

メールアドレス:satoh.masaya@tokushima-u.ac.jp

『日本通信』の謎、次回研究会のご案内

日本通信』の謎

読書会でテキストにしている『日本通信』ですが、ポルトガルでは6巻に分けて刊行されています。日本語訳は、『定本モラエス全集』に収められていて、1巻から6巻まで一続きに読めるのですが、訳あって原著を調べる必要が出てきたので原著を探したところ、とても困惑することが起きました。

 

というのは、これら6巻は、3つの出版社から別々に刊行されていて、それぞれ題名の付け方が違っているため、どれが何巻なのかとても分かりづらいのです。

 

例えば、1、2巻はLivraria Magalhães e Moniz Editoraという出版社から1904年と1905年に刊行され、1巻には1902-1904年の記事が、2巻には1904-1905年の記事が収められています。これらにはタイトルに副題がついています。

 

”Cartas do Japão : Antes da guerra” (日本通信:戦前)

”Cartas do Japão : Um ano de guerra”(日本通信:戦争の年)

 

戦争というのは日露戦争のことです。2巻は、日露戦争の開戦から終戦までの時期と重なっているので、このような副題がつけられたのです。

 

3巻は1905-1906年の記事が収められているのですが、出版社がLello Editores社に変わり、1907年に刊行されました。ややこしいことに、本のタイトルには日本通信という言葉なく、”A Vida Japoneza” (日本人の生活)というタイトルになっています。

 

この後、新聞連載は1913年まで続きましたが、本として刊行されるのはしばらく中断しました。そして連載が終了してから15年経った1928年になって、ようやく残りがPortugal-Brasil社から刊行されました。

 

4巻から6巻までは、それぞれ1907-1908年、1909-1910年、191-1913年の記事がまとめられています。そしてこれらは、またややこしいことに”Cartas do Japão 2ª série”(『日本通信』第2シリーズ)と銘打たれ、4巻、5巻、6巻ではなく2-1、2-2、2-3と番号がつけられました。

 

つまり本のタイトルだけ見たのでは、どれが何巻なのか全然分からないのです。

しかし、そんなグチをこぼしても仕方ないですね。

 

それはさておき、第2シリーズは、なぜ連載終了から15年も経ってから刊行されたのでしょうか。その理由は、1926年に出た『おヨネとコハル』が大評判になったからでした。日本通信の後半が、刊行されていないことが気がかりだったモラエスは、これを機に出版しようと働きかけたのでした。日本通信がすべて刊行されて安心したのでしょうか、モラエスは翌年の1929年に亡くなりました。

 

次回研究会開催ご案内

 次回の研究会・読書会は下記の日時で開催いたしますので、奮ってご参加ください。

 

研究会例会・読書会:

日   時: 令和6年3月2日(土) 10時30分~12時

場   所: 徳島大学総合科学部1号館・社会創生ゼミ室2

      (下のキャンパスマップの赤丸で示した場所です。)

参 加 費: 無料(申し込み不要)

読書会の内容:資料はその場で配布予定です。

 

※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。

 

 

お問い合わせ先:

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

佐藤 征弥

電話:088-656-7222

メールアドレス:satoh.masaya@tokushima-u.ac.jp