1 ) 例会・読書会開催の報告
2020年12月5日(土)に例会・読書会を開催しました。
読書会の前に、『徳島中学校・城南高校百年史』からモラエス全集翻訳をなしとげた花野富蔵氏の旧制中学の学生だった頃のエピソードを紹介しました。学校が発行する機関誌『渦の音』に載せるために書いた作文が、掲載を拒否され、学校に絶望したエピソードは、その後の彼の人生に繋がるように思われます。また、『徳島中学校・城南高校百年史』には、モラエス宅の近所に住み『徳島の盆踊り』にも登場する徳島中学校の教師小出植男に関するエピソードも記されていました。
読書会では『シナ・日本風物詩』から「楠公の白馬」を読み合わせました。モラエスは、湊川神社で飼われている神馬、退屈な日々を過ごす白馬に自分を重ね合わせるのでした。
この作品の読みどころの一つは、賑やかな祭りの様子の描写です。
「ちょっと離れたところに、銅貨一枚で入場できる大衆向きの見世物小屋 — 賢い犬と猿、豪力の力士、奇形児の男女、奇怪な大蛇、パノラマ — や、噺家(はなしか)がおもしろおかしい噺を常連にきかせて、気をまぎらわせている「よせ」がある。もっと広い空地では、蓄音機を据えつけた人や、「げんすい」という大道歯医者や、奇跡的な薬の発明者が、なにやらわめきたてて、くどくどと説明したり説教したりしている。」
現在は、このような光景はなくなってしまいました。徳島でも縁日が立つような神社のお祭りは見られません。地域おこしの類のイベントがそれに替わっていっているのでしょう。研究会では、このような祭りの情景の変化について会話がはずみました。
また、面白いことにこの「楠公の白馬」は、横光利一の「神馬」という作品にとても似ています。神馬の退屈な1日を主題としているところ、老婆から豆をもらうところ、牝馬に興奮するところが共通しています。横光とモラエスにはまったく接点はなさそうですし、横光が「神馬」を書いたのはモラエスがこれを発表した8年後ですが、邦訳されていなかったので、横光がこれを読んだとも考えにくいです。偶然なのか、それともどこかで知る機会があったのか、興味深いです。
研究会終了後に、学部図書室に展示された「文学者がみたモラエス」パネルを見学してもらいました。モラエスのことを知らない学生でも、著名な文学者のコメントを通してモラエスに関心を持ってもらえるのではないかと、見学者から期待の声があがりました。
2 ) 次回開催予定
※お車でお越しになる場合,駐車場(工学部の正門ゲートを通って図書館南側駐車場)が利用可能ですが,できるだけ公共の交通機関をご利用ください。なお,ゲートに守衛さんが不在の時には,インターホンで来意をお告げください。
参 加 費: 無料(申し込み不要)
読書会の内容:資料はその場で配布予定です。